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09:51:37 | | page top↑
【クマのねぶくろ】#1(少女はクマに出会う)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

とある北の町。
山の奥のバンガローに、
クマのねぶくろがポツンと置かれていました。

「クマのねぶくろ」というのは結果的にという意味ですが、
タイトルでもあるので早めに言っても罪じゃないと思います。

とある北の町。
山の奥のバンガローにポツンと置かれていたのは、
クマのねぶくろでした。

ふもとの小さな町。
ある日つまらないことでお母さんとケンカして家を飛び出した少女。
思春期にさしかかった難しい年代の少女。
うさばらしに森を散歩していると偶然にもその秘密の場所を発見し、
もしかしたらピカピカのくまが近くにいるかもしれないわ、
と少女は目を丸くして辺りをキョロキョロ見回します。

クマはちょうど茂みに落ちた木の実を拾い集めてるところでしたが、
にんげんの匂いがしたものだから、本能で毛が逆立ちます。
これは猟師かしら?と警戒しながら、
おそるおそる木陰からバンガローを眺めます。

でも、どうでしょう!!
愛くるしい少女がキョロキョロしてるではありませんか。
クマはそれを見てホッと胸をなで下ろします。

それからクマは観察します。
ほっそりとした手足、
赤いワンピース、
赤いほっぺ、
よく動く大きな黒い2つの目。

無邪気なクマはたちまち少女に恋をしてしまいました。

クマはいてもたってもいられず一目散に走り、
拾い集めた木の実を交換にして、
シカのみち子さんに甘い花をゆずってもらいます。
とってかえすとまだキョロキョロしてる少女の方へ近づき、
傷つけないように爪を隠し、そっとうしろから肩を叩くのでした。

怖がらないで、恐れないで・・・だいじょうぶ。

少女は死角にいたクマを目にし一瞬ぎょっとしましたが、
クマが甘い花を少女にそっと差し出しはにかむと、
そのキュートなポーズに思わずほほえんでしまいました。
そして緊張がほぐれたのと、愛くるしさに胸を打たれたのとで、
少女もまた恋におちるのでした。

そもそもつまらないことでお母さんとケンカして家出した少女は、
山の向こう町の腐れ縁のヤツのねぐらにとうぶんやっかいになる気でいましたが、
クマと出会ったとたん急に心が変わりました。

誘われるがまま、甘い花に囲まれた濃密な夜にクマと二人、
あのバンガローにポツンと置かれたねぶくろにしっぽりとおさまり、
何度も、何度も・・・何度も。
長いようで、はかない夜を、
狂おしく、狂おしく、過ごしたのでした。

 

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【クマのねぶくろ】#2(少年)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

森の少女にはおさな馴染みがいました。
同じ北の町、近所に住み、同じ砂場で遊び、
同じ学校、同じ帰り道くらい、
馴染みの少年でした。

小学校の中学年になるとクラスメイトの手前もあり、
一緒に歩く機会は徐々に少なくなってはいくのですが、
少年はひそかに少女が好きでした。

近所だから仕方ない部分もあります。
庭に水を撒く少女のスレンダーな手足、大きな瞳、桃色した唇。
14歳になった少年は少女のふとももの奥をイメージしながら、
学校から帰るとすぐに部屋でゆっくりとマスターベーションするのが日課でした。

ある晴れた日。
少年がいつものように学校から帰ってマスターベーションをしていると、
うっすら少女の家からお母さんと娘がケンカをしているのが聞こえます。
少年はペニスを挟まないようにチャックをしめます。
手を洗おうかどうか迷いましたが好奇心を押えることは出来ません。
階段を駆け下り、玄関を押しあけながらクツをひっかけ外に出ると、
そっと少女の家の裏庭から声のする部屋の方へ忍び寄ります。
耳を澄ませてみましょう・・・どうでしょう!やはり親子ケンカです。
どうやら少女の化粧が母親は気に入らないようですね・・・。

「あなたはどうしてそんなに派手なシャドーをつけるの?」
「自分の弱さを隠し、町を威嚇するためだわ」
少女は一歩も引きません。
「おかあさんだって化粧するわよね?」
「わたしの化粧は町を飾るためにするの、あんたとは違うのよ」
お母さんも引くつもりはないようです。
「どうちがうのかしらね!」
結局どちらも収めることもなく話しはずっと平行線のままです。

少年は化粧については何の感慨も興味もなかったので、
壁に寄りかかって午後の余韻に浸りながらウトウトしていましたが、
「お母さん、死ね!」と言って玄関をバタン!と締める音で飛び起きました。
ぼんやりしながらすたこらと走り出す少女を目に、
条件反射で身体を起こして追いかけます。
うまい具合に見つからないような距離を保ちながら、
そのまま二人は山に入っていくのでした。

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【クマのねぶくろ】#3(少年は追う)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

二人は森の奥へ奥へと入ってゆきます。
少女の30~50メートルくらい後ろをこそこそと追いながら、
もし少女が泣き出したら抱いてあげようと少年は考えていました。
いつか少女を犯す。
実は少年は中学に入ってからずっと、
その機会を虎視眈々とですが狙っていたのでした。

少年は実際とても狡猾でとても計算高い性格でしたので、
頭の中で何度も何度もイメージトレーニングします。
備えれば憂いなし、です。

①一人で森に入った女の子はいづれ淋しくなってシクシクと泣く。
②もし少女が泣き出したら優しく抱いてやる。
③少女は僕を欲しがる。
④僕は少女をものにする。

浅はかなファンシーですね。
その先のみだらさをしながら、
でも少年は意気揚揚として少女を追って森の奥へ奥へと進むのでした。
バレたらいけないという制約は否応なく少年を立たせます。
木々の葉に陣取る鳥たちに普段はしない挨拶を、
今日だけは大声でしたい気分でしたが、少年は股間を押さえながら必死で堪えました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どれくらい歩いたことでしょう。
ありえないくらいの坂道を上ったり下ったり、
木をまたいだり、川をジャンプしながら、少年は少女に引っ張られながらあとを追います。
「なんだよコレ…早く泣けってばこのやろう」
乳酸と同時にストレスも溜まります。
それから約1時間。
ついに少年はクタクタになり、その場にヘタれこんでしまいました。
「あいつ軽すぎる・・・」
少年は知りませんでした。
実はこのあたりは少女にとっては庭のようなものです。
少女は何かから逃げようとするときや一人になりたいとき、
誰かに怒られてムカムカがおさまらないときにはよく、
一人でこの森を抜けて隣町の友人にグチをこぼしに行っていたのでした。
華奢な少女は実はタフだったのです。

そうとはつゆ知らず、うかつにも少女を追って森に入った少年はすっかり疲れ果ててしまい、
かっこ悪いよと思いながらも、仕方ありません。
誰も見てないのをこれ幸いに、
ほどよい原っぱにさしかかったとき、
たまらずにしゃがみこんでしまいました。

ふぅ・・・無理だ。

風はやさしく草原をそよぎ、少年にキスをします。
少女がスタスタ歩いて行くのをぼんやり見つめながら、
意識するまでもなくいつの間にか少年は疲れた体に手足をたたみ、
すやすやと眠ってしまうのでした・・・。

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【クマのねぶくろ】#4(少年がみたおぞましいもの)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

カー・・カー・・カラスが鳴くから帰りましょう・・・あ?

少年が目を覚ますと外はすでにだいぶ暗くなりかけていました。
なに・・・どうしてこんなとこで寝てんだろう?くらい少年は思いましたが、
覚醒と夢のハザマで意識を揺らしながら徐々に自分を取り戻しました。

そうそう・・・彼女は一体どこへ消えたんだろう・・・。
確かあっちだったっけなぁ・・・。

少年は目を細めて辺りを見回します。
すると少女が消えた方角の少し先の方に、
かすかなオレンジの明かりが見えてきました。
あ、いたいた、と少年はこおどりしてよろこび、
誰にはばかることなく駆けだしましたが、
すぐに勾配はきつくなり少年は7分くらいでまた歩き出しました。

夕暮れの森はうっそうとして、少年はすこし心細くなりましたが、
この先に美しい少女が一人で泣いてるかもしれないと思うと、
そのハートビートは加速してゆくのでした。
泣いている彼女はぼくを見て、すこし微笑むかもしれない。
そうなれば彼女はぼくを好きになるから、
マスターベーション生活からの卒業だなと少年は思い描きました。

道すがら少女の痕跡を追います。_
少女の足あと、ところどころもぎ取られたまだ青い葉っぱ。
きれいに折られた枝、放り出したナプキン、中央から切られたカブトムシ。
逆にクモの巣の中央に放置されたミノムシなど・・・etc。

少年は少女の中にある残酷も好きでした。

そうこうするうちに遠くの明かりはだんだん近くなり、
それにあわせて少年はペースを落とし、
足音を忍ばせながらそのオレンジの光に近づいて行きます。
そろりそろりと近づくと森の真中にはポッカリと広場がありって、
その中央に小さいけれども、分厚い頑丈なバンガローが一軒、
ポツンと建っていたのでした。
はぁ…?と少年は思うのですが辺りはもう真っ暗です。
選択の余地なんてないのです。
少年は息を殺してバンガローに近づきます。
そして窓からそっとのぞくと・・・

が…う…え?

少年は絶句します。
バンガローの中では豪腕そうなクマが、
そのオニのようなペニスを華奢な少女の中に、
今まさに激しく滑り込ませているさなかでした。
少女は少年が今まで見たことのない女の顔をして、
むき出しになった自らの身体をクマの方へと投げ出し、
その絶頂へと悲鳴もろともに昇ってゆくところだったのです。

少年は耳をふさぎ、しゃがみ込みます。
時折もれてくる狂った音を自分から排除するために、
それこそ必死の思いで耳を塞ぐのでした。
目の中は閉じているにも関わらず赤くなったり白くなったりしました。
この悪夢を早く終わらせろ。
消えろオニ。
ああああああああああ・・・・・・・

少年はクマに向かう勇気なんてありません。
ここはただ耐えるしかありません。

おわれおわれおわれおわれ…
しねしねしねしねしねしね…
はねろはねろはねろくびくびくび…

やがて一つの絶叫が広場をつらぬき、
それが終わると森は、す・・・と静寂を取り戻しました。
そして少年は、おやおや窓枠の下で白目をむいて倒れていました。

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【クマのねぶくろ】#5(少女のおもわく)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

わたしは小さなまるいものになって、
まいにちおそらをとんでいました。
いえ、とんでるっていうのはてきせつではないかもしれない。
だってあたしはただ浮かんでいただけだもの。

あるときおおきな風がふいて、わたしは勝手にはとべなくなりました。
どこかとおくへ、それはわたしをいわば強制的にとばしていったのです。
こわくて、ずっと泣いてました。
くらいくらい夜が何日もつづきました。
ふしぎですが、夜なのにおそらには星が見えませんでした。
わたしはたくさん泣きましたが、そのうちかんねんしてずっと眠ることにしました。
眠ればかなしみは消えるのはもっと小さいころから知っていました。

あるとき、目を覚ますとわたしはわたしになっていました。
寝て起きたらわたしはわたしだったのです。
なまえは・・・うまく思い出せません。
でもわたしでした。

おかあさんはわたしにぬいぐるみをつくったり、
洋服をつくったり、リボンのとめかたをおしてくれたりしました。
きほんてきにいいにんげんです。
でもおとおさんはあまりよくわからない。
いつもわらってないし、なにかいやなことがあるのかもしれません。
たまによろこんだと思うとわたしにキスしようとしますが、
わたしは、さっと逃げて、キー!といいます。
おとおさんはかなしそうにわらってます。

学校へはあまりいきません。
いってもみんなと話してもつまらないからです。
先生もすきじゃありません。
わたしはなるべく目立たないようにして生きてます。
でも教室にある、なかまだよみたいな空気や、
めずらしいものを見るような視線に触れると、
わたしはぞっとして息苦しくなります。
そんなとき、たいていは空気を吸うために教室を出て森に行きます。
それか森をうかいして町に出て知らない男とSEXをします。
SEXは好きですが、でもやっぱりわたしは森の方が好きだとおもいます。
森がないと、たぶんわたしは死んでしまうでしょう。
じっさいに死んだ方が楽な気もたまにするものです。

でもあるときわたしは森で大きなオスに出会いました。
それはにんげんではないけれど、
わたしを押さえ込むくらい強烈なチカラを持ったオスでした。
わたしはそのオスとかんけいしましたが、
それはまるでなにかを超える儀式のように感じました。
ぎりぎりとめり込んで痛いのは、きっと儀式にちがいないわ!

目が醒めたとき、わたしは次にナニモノになってるのかな。
ふふふ・・・なんかこわいけど、ちょーわらえます。
いま、わたしはわたしにさせたものへのお返しに、
わたしはわたしを捨てました。

またとべたらいいな。
でもまた飛ばされんのはやだな。

ふぁぁ・・・いいや、めんどい。

もう遅いからとっとと寝てしまいましょう・・・。
そうれがいい、それがいい・・・

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19:10:49 | 未選択 | トラックバック() | コメント(0) | page top↑
【クマのねぶくろ】#6(クマの平和な時代)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

ぼくはひとりだった。
ながいこと、ずっとひとりだった。
やさしくてあたたかいおかあさんも、
いさましくゆうかんなおとおさんも、
いもうとのエイミーもみんな、
にんげんにころされて肉と皮になりました。
てっぽうで打たれたときの赤い色をおぼえています。
だから、ぼくはいまも肉をたべれません。
木から実をもらったり、
キノコをバターとはちみつで炒めてたべるのです。

ぼくは字がよみかきできないので、
生きてくにはぐたいてきなモノをつくります。
かたちでしめすのしかないのです。
ぼくは山のどこに美しい水があるかを知っています。
みつばちにぐたいてきに水をはこんでやり、
ぼくはみつばちたちに黄金のミツをもらいます。
ロイヤルなゼリーです。

にんげんとはほとんどかかわりません。
だっておとおさんもおかあさんもいもうとも殺されたんですから、
かかわったらぼくもころされてしまうじゃないかっ!
だからにんげんはこわい動物です。
ぼくはずっとこうしてしずかに生きてればいいのです。

でも、ある晴れた午後にぼくはにんげんの女の子を好きになりました。
ぼくのうちのまわりを唄いながらきょろきょろしていた、
れっきとしたにんげんの女の子です。
ぼくは肉をたべないのでもちろんおそいませんが、
たいていのにんげんはぼくをみると逃げますが、
あの娘はにげませんでした。
ぼくが彼女に花をあげると、女の子はありがとうと言ってまぶしくわらいました。
夕食の時間になるとぼくらは、はちみつでつくったパンとアイスクリームをたべました。
彼女はおいしそうにペロッと全部たべると、また、とてもまぶしくわらいました。
そして服を脱ぎ、ぼくに抱いてといいました。

ぼくはにんげんの女を抱くのははじめてでしたが、
ふしぎにうしろめたさ、というような、なんていうか、
まちがったことをしてる気がしませんでした。
そんなにおおくのメスを抱いたことがあるわけでもないですが、
にんげん、いやこの娘はしっくりきました。

ぼくはひとりだった。
ながいこと、ずっとひとりだった。
ぼくは字がよみかきできず、
ぐたいてきなモノをつくります。
でも、この娘となら、もっとちがうなにかをつくれそうな予感がするのです。
みんな笑うかもしれない。
クマとにんげんがキスをするのは、どこかちがうのかもしれない。
でもかまわない。
ぼくは、たぶん、彼女を愛してる。
ずっと守りたい。
愛してる…。

そんなこと考えながら、
今ぼくは彼女のねがおをじっと見ているんだ。

暖炉の火を消す。
そしてぼくはこの薄い皮膚と肉がこごえてしまわないようにって、
そっと大きな毛皮で包み、眠る。

眠るんだ…。

さぁ、おやすみ。

愛してる……おやすみ。

 

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19:11:30 | 未選択 | トラックバック() | コメント(0) | page top↑
【クマのねぶくろ】#7(少年の闇の知恵)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

いろんな夢をつつんで・・・
森の夜はしんしんと更けてゆきます。
この森にあり、生けるたましいの全ては透明になりました。

森の寒さに耐えかねて窓枠の下に白目をむいた少年は目を覚まします。
そして震えながら我にかえると、さっとバンガローを離れます。

・・・ぼくははいったいなにを見た?
あれは誰で、誰が誰なのさ?

いや、それは違う。
少年はすべてを見たのです。
少年が求めてやまない少女は、今クマの手に落ちたのです。
それが、事実。
「OK・・・いいよ・・・それで?」
少年は自分に問います。
冷静に・・・冷静に・・・状況の整理を試みます。
なにしろここで冷静に考えなければ、
自分の存在そのものが耐えられるわけがないからです。

さて、ぼくはクマに勝てるか?
→チカラで勝負すれば負ける。

ではどうする?
→チカラで勝負しない。

ではなにでヤル?
→知恵。

想像もつかない闇の知恵だ。
想像も出来ないから回避できない。
悪いけど単純にキレたからね、ぷーさん。

ひひひ・・・(◎д◎)ころせ・・・ころせ

少年はとても狡猾で計算高いにんげんです。
少年は闇に叫びます。

>!>!>!>!FUCK you!<!<!<!<

いたくプライドを傷つけられた少年に愛などありません。
少年はクマの惨殺を決意しました。

とびっきりの黒い知恵・・・。

①クマの大切なモノを奪う。
②それを西の森の底なし沼に浮かべる。
③やつに知らせる。
④やつは勇敢にも入ってゆくが苦しみもがき、死ぬ。

もし、お池に入らなかった場合はどうする…?
・・・イージーだ、役所に襲われたって通報して殺させればいい。

けけけ・・・パーフェクトやんけ。

少年はこおどりしてよろこび、
その地方に古くから伝わるコサックダンスで自分を慰めました。
あとは夜が明けるのを静かに待つだけ。
すべてを劇的に変えてやるよ・・・。

少年は白い息をこぶしにあてながら、
大木の影にしゃがみ寒さに震えながらも、
静かにしずかに・・・朝を待つのでした。

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19:12:41 | 未選択 | トラックバック() | コメント(0) | page top↑
【クマのねぶくろ】#8(クマの惨劇)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

翌朝しらじらと夜が明け始める頃、クマは目を開き、
隣りで丸くなって眠るあどけない少女のほっぺに、
気づかれないくらいの小さなキスをしました。

クマはそっとねぶくろを離れます。

暖炉に細い木を足して小さな火をつくり、
ゆっくりと温まるようにスープのナベをつがいに渡してから、
朝一番の新鮮なハチミツをもらうため、いさぎよく扉を開き、
森の奥へ歩いてゆくのです。

扉を閉める時。
振り返るとちょうど少女は寝返りを打ち、
何かに向けて優しくほほえむのでした。

踏み出した森の景色は心なしか昨日と少しだけ違うような気がしましたが、
それは彼女と過ごした親密な夜のせいかもしれません。
ところどころにうっすらとにんげんの匂いがしますが、
それもイタズラな彼女のフットワークかとと思うと、
クマはいろんなことが一緒におかしくなって、ほほえむのでした。

クマは森の奥へと進んで行きます。
山麓の急な斜面の、手付かずの水が沸く場に着きました。
クマはいつものようにまず水を口に含みその甘味を確かめてから、
立てかけてあった竹の筒を湧き水で満たします。
そしてゆっくりと谷あいをつたい、みつばちの巣に向かいます。

遠く山脈に積もる雪を朝の白い太陽が純白に輝かせてます。
空は透き通って青く、雲は限りなく自由に、鳥はその憧れを唄い世界を見渡しています。
土に、空に、木々に、すべてに。
手に触れるあたたかな幸せを、今、ぼくは目を閉じて神様に感謝しよう・・・。

バリバリバリッ!?

そのとき、けたたましい羽音が空から降って来ました。
見上げるとみつばちの大群が一斉に空を黒く染めています。
「クマさんクマさん!たいへん!」
ハチたちはクマに叫びます。
「おはよう、水はここだよ」
「違う、わたしたちのこどもと女王がっ!!」
「一体どうしたんですかっ!!」
「たすけてー!!」

みつばちはクマを谷あいの森にある泉へけたたましい羽音とともに誘導します。
クマがつむじ風のように地を駆け抜けて泉に着くと…な、なんということでしょうかっ!!!
泉の中央に浮かぶ枯れ木の上、出口をおおわれたみつばちの巣に火が放たれ、
赤く残酷に燃え上がっていました。
「・・・・・これは?!」
「あの中に女王と80匹の仲間、わたしたちの妻、わたしたちの子供が閉じ込められ、いま焼かれているのです」

クマは絶句します・・・なんでこんなことが・・・。

一瞬に視界が純白になり、クマは野生の咆哮を森中にとどろかせます。
そしてクマは泉に飛び込み、水を勢いよく跳ね上げながら猛然と中央に向け、
クマはて手を回し足をこぎます。

しかし…なんだ…コレはなんだっ?!

その手足には一瞬にして藻が絡まり、
たちまちクマは身動きが取れなくなってしまいました。

ウガガアガ・・・ゴフウウ・・・

必死で手足を動かそうとするのですが、藻はよけいにクマを締め上げ、
ずるずると泉の底へ引きずり込みます。
かたや泉の中央では巣に放たれた火がその勢いを増し、
閉じ込められたみちばちたちの悲痛な羽音、その周りを囲むみつばちたちの叫び声、
妻やこどもを助けようと火に飛び込むものたちの焼かれる匂い、うめき、きしみ。
断末魔、地獄絵図がクマの眼に映ります。

理不尽な痛み・・・哀しみ・・・苦しみ…。

クマの手足はしびれ、神経が寸断されました。
口から漏れた水がのど通り胃を徐々に満たしてゆくのを感じました。
かろうじて空気に触れていた鼻はもはや波の気まぐれに遊ばれ、
少しずつその身体は沈んでゆきます。
そしてクマは自らの死を覚悟するのでした。
むせび、のどをつたう水はクマに涙の味を思わせました。
世界は赤く白く揺れて、すべての空気を使い切ったあと…黒く消えてゆきます。

クマは遠い、遠い青を、遊ぶ水の向こうの遠くに見ました。

そして最期に少女の美しいほほえみを自分のすぐ近くに見ました。

今、世界は静かに消えてゆきました…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そのとき…少女は笑っていました。
バンガローで目を覚まし、森と太陽で出来た朝の空気を胸いっぱいに満たしながら。

そして少年も笑っていました。

泉のほとり、木陰に隠れ、そのすべてを見届けながら・・・。

 

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【クマのねぶくろ】#9(クマ殺し動く)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

森のバンガロー。
あたたかなねぶくろの中、少女は目を覚ましました。
部屋の中は暖炉でコトコト揺れたスープの甘い香りで、
その隅っこまでいっぱい幸せで満ちています。
少女は少し迷ったあと「えいっ」と身体を起こすと、
跳ねるように窓に近づきチカラいっぱいに開きます。
朝一番の太陽が目に染みる時、なぜか少女はうれしくてうれしくて、
本当にたくさんの涙をながしました。
そして空気を胸いっぱいに満たし、クマを想い、やさしく微笑むのでした。

少年は泉のほとり、中央でみつばちの巣が灰となり、クマが狂気の沙汰で沈み、
森が静寂を取り戻すを見届けたあと、スガスガしい気持ちでバンガローに向かいました。
これですべてはあるべき形へ向かうはずだと少年は思いました。
クマと人なんて食うか食われるかしかないね。
迷いも後悔もない。
「ノーモアクライ。大丈夫、助けに来たよ」と彼女に言おうかな。
少年も笑いました。

少女は充分に温まったスープを暖炉から下ろし、洗濯をはじめました。
部屋を掃除しながら、正午までクマの帰りを待ちます。
きっと張り切ってあたしのために何か美しいものを探してるんだわ・・・と、胸をときめかせながら。
でもお昼を過ぎてもクマは帰ってきません。
少女はスープとパンをボソボソと一人で食べることにしました。
それから部屋にあったCD(たいていは少し古めのPOP)を聞きながら、
歌詞カードを見ながら唄ってましたが、山肌に太陽が沈みかけ、
部屋が少し寒くなっても、クマはいっこうに帰って来ません。
さすがの少女も、いったい何が起きてるのだろう、と心配になりました。

・・・夜になり、少女は孤独で泣きました。
ねえ、あなたはどこへ行ったの?
少女は誰でもない誰かに尋ねます。
でももちろんのこと誰も何も答えてはくれません。
少女は静かに涙を流します。
部屋は暖炉のオレンジは、それでもやさしく少女を暖かく包みます。
そのときふと少女はクマの声を聞いた気がしました。
遠くではなく、近くで。
少女はハッと振り返る。
それは声ではない何かを闇の中で訴えるのでした。
わたし寝てるのかしら?
そのとき、ふと玄関のドアがコンコンとなりました。
「あ!クマきた!」
少女は強がってなんでもない風に見せようとし、
涙のあとをそで口でカサカサとこすって消してから、
元気よく玄関を開けました。

すると・・・どうして?
近所の少年がニヤニヤしながら立っていました。
少女はあまりにも意外だったので声が出ません。
じー・・・と少年を覗き込んでるだけです。
「や、やぁ」と、いたたまれなくなって少年は右手を上げました。
「おう、意外じゃんか」と少女はわざと陽気に応えました。
そして少しの沈黙のあと少年は静かに少女に伝えました。
「クマは、遠くに行ってしまったよ・・・」
少女は黙ってうつむきます・・・。
なぜ、でも、どうして、でもなく。
少年は少女が心で泣いているのが分かりました。

「少し話したい。入っていい?」

うつむいたまま小さくうなずくと、
少女はクマ殺しの少年をバンガローに導きました。

 

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【クマのねぶくろ】#10(少年の話し)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

クマは遠くに行ってしまったんだ。
暖炉の前で少年は静かに少女に伝えました。
「彼はもう帰ってはこないよ」と。

もちろん帰れなくしたのは彼自身ですので、
これは本当はとてもしらじらしい嘘なのですが、
ここは100歩ゆずって少年の意見を聞いてみることにしましょう…

~ 少年の話したこと ~

きのう親戚からたくさんイチゴが贈られてきたんで、
キミの家におすそわけに持っていったんだ。
そしたらおばさんがキミのことでイライラして仕方ないって言うから、
「彼女と話させてくださいって」って言ったらさぁ・・・、
キミが森に逃げてしまってて帰ってきてないって言うじゃないか。
だからぼく心配になって、迎えに来たんだ。
森は事件が多いからね…底なしの沼とかもあるしさ。

ここのコトはケモノたちが教えてくれたんだ。
「この辺に女の子が通らなかったかい?」って聞いたら。
「ああ、女の子はあっちの方へ言ったよ」ってみんな教えてくれた。
「そうそうあっちだ」って、カラスや野犬たちがね。
そんな風にしてようやく今ここに辿り着いたってわけさ!
(しめしめ、スジはOK)。

で…とても話しづらいことなんだけど、
途中で切り株に座ってるクマに出会った。
なぜかしら、とても辛そうにしててさ。
クマだからぼくだってもちろん怖いよ?
でも、ぼくにはほっておくわけにはいかなかったんだ。
「どうしたの?」ってぼくは聞いた。
そしたらクマは「間違ったことをしてしまったよ」ってぼくに言うんだ。
「間違ったことって?」
「…オレは人間の女を汚してしまった・・・」ってね。
ぼくは一瞬でキミのことだと思った。
だから詳しく聞かせてくれないか?と言ったんだ。

~ 少年が言うクマが話したこと(また聞きのまた聞き) ~

オレはケモノだ。
肉を食うケモノだ。
昨日、オレは一人のにんげんのメスを家に招き、犯した。
自分のモノにしたんだ。
簡単に言えば肉体的に犯した。
まぁそれなりに楽しめたし手ごたえもあったからそれはそれでよしとしよう。

ことが終わると少女は満足してスヤスヤと眠った。
なんて無防備なんだろう。
オレはケモノだ。
肉を食うケモノだ。
わかるだろ?

オレは人間のはらわたをすすりたい。
真っ赤な血を腹いっぱいに飲みたくて仕方ない。
いいクマを演じて油断させてしまえば、殺ろうと思えばいつでも出来る。
簡単に殺せる。
でもね…どこか違うんだ。
あの女はオレの中の何かに訴えかけてきやがる。
とても懐かしく、いとおしい何か。
なぜかオレには彼女を殺せない。
殺すのは違う気がする。
でもオレの中のケモノは若い肉を食らいたい・・・。
こんな辛いことはない。
オマエにオレの苦しみなんてわからないだろうよ。
気が狂いそうなほどの苦しみだ。
中断されたマスターベーションみたいにネ。

クマはそう言ったよ。

~ 再び少年の話し ~

だからぼくはクマに言ったんだ。
「彼女はぼくの大切な人だ、食うならぼくを食えばいい」と。
そういうとクマは咆哮を上げぼくに襲いかかってきた。
でもぼくは目をカッと見開いて、逃げなかった。
(うそだ、ばか)
そしたらクマはすんでのところでぼくの首からキバを外し、
「キミの勇気に超感動したよ」と言った。
自分は去る、彼女を迎えにいけ、幸せにするんだ、と。
クマが最期にこの場所を教えてくれたんだ。
(なんつってね、言いすぎかな・・・)

クマが去ったあと、
ぼくは切り株に座ってずっと悩んでいた。
真実をキミに伝えることでキミを傷つけるのがこわかったんだ。
でもね、結局はキミを迎えにいこうと思った。
ぼくがこのままじっと考えてたってキミが孤独であることは変わらない。
キズつくならキズついてもいい、ぼくはそれを受け止めようって、
そう思ったんだよ。
(うっしゃ・・・)

少年はそこまでを話し、
目を閉じてこころの中で(ひひひひ…)とほくそえむのでした。

 

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【クマのねぶくろ】#11(少女のカラッポ)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

こいつは一体ナニを言ってんだ…と、
幼なじみの少年を前に少女は思いました。
ゆうべ、あんな優しく、狂おしく守りあったカラダも、
交わしたキスが全部うそだと?
クマが本当はわたしを切り裂いて血のついた肉を食べたかったって?
「…うそだネ」少女は少年に言います。
「…ばかじゃん」

少年は何も言いません。
じっとひざを抱えたまま暖炉を見つめています。
「どーしてなにも言わないの…?」
少女は少年を問い詰めます。
ねー…なにが起きてるの?
これは現実なのか?
実際のところ少年は想定していたシナリオが狂ってるので、
アドリブが効いてないだけだったのですが・・・。

少女はすっくと立ち上がって部屋を見渡します。
小さく頑丈なバンガロー。
温かいオレンジの炎。
でも放置されたままのクマのねぶくろ。

わたしは今なにを思えばいいのかしら。
ここで泣くのはたやすいね。
でもちがう、それは解決じゃない・・・それは解決じゃないんだって。
あたし、そんなに弱くないはず。
弱くないでしょ?
「あたしいろんなこと努力したのに…」
少年は何も言いません。
「ねー、ちがうの?あたしナニか悪いことした?」
見下ろす少年は目を閉じたままじっとしています。
玄関に目をやる。
クマは帰ってきません。
実際に、現実的に帰ってないのは事実です。
少女は床にペタンとしゃがみこみ、
うつむいたまま目を閉じて声を出さず泣きました。
クマが消えた事実を否定しようとするだけバカみたいじゃんか。
分かってるけど理不尽じゃないか・・・。
少女は静かに肩を震わせます。
スルっとした白い手は痙攣のように震えています。

少年は黙ったまま、それを横目でチラチラと見ていました。
(オレが殺したんだよ…てかお前いい女になったよな・・・ホント)
少女がカラッポになり狂うまで黙ってることは、
最期の一言を重く、重く、するための少年の残酷なシナリオです。
(ククク・・・想定内だぜファッキンめす犬・・・あとでたっぷりと絞り取ってやるぜ、
その生意気な毒をよ・・・)
少年は心の中でマゾのように冷酷に笑いました。
でも外見はクールに・・・狙い済ましたように少年は少女の腰にそっと手を置きます。
もう少女を守るなにもここにはありません。

少女は静かに嗚咽し、少年の肩袖に小さな鼻を押し付け、やがて大粒の涙を流しました。
その時、少年は腹の底から熱いものが込み上げてくるのを感じました。
右手しか知らない少年は人知れず勃起しました。
(やべー立った!がまんがまん・・・)
やがて時計が午前2時の鐘を小さく鳴らします。
少女はまるで眠っているように、少年にもたれたままです。

…やがて少女は少年にそっと「抱いて」と言いました。
少年は頭でノルウェーの森のサビを唄いました。


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19:15:12 | 未選択 | トラックバック() | コメント(0) | page top↑
【クマのねぶくろ】#12(少年のチェリー)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

木の皮をひとつひとつ剥ぐように、
少年は少女を一枚ずつムキだしにしていきます。
友達からAVを借りて何度もなんども反復して学習していたので、
要領はあらかた分かるつもりです。

少年は少女の後ろに回り、首にキスをし、軽く耳を噛みます。
その身体の緊張をほぐすと、ゆっくり背中を撫でるようにして白いセーターを脱がせました。
(けっこう身体はおねえさん・・・)
白いスレンダーな肩から腰にかけてのラインを見ながら、
少年は生つばをゴクンと1回だけ飲みました。
(コレ同い年じゃないよなぁ・・・)
少年はスカートに手をかけます。
オレンジの暖炉に踊る影。
闇の中では少女のフトモモだけ妙に白く、透き通るように妖しく浮かびました。
少年はまるでモンキーになり少女の腰にすがります。
でもジッパーのありかが分からない少年があれこれとまごついてるのを見たら、
少女は一瞬だけホッとして、自らスカートを脱ぐのでした。

少女がスカートを脱ぐと、
少年はまるでクリスマスの包みを開けるようにして、スカートの中をまさぐります。
いよいよむきだしになった小劇場。

実際のところ、少年はその実物を見るのは初めてでした。
それはツルンとした捉えようのない丘と谷あいの川。
その中央の湿地帯はヌチヌチと光沢を帯びていました。
感極まると少年はくちびるを押し付けて、それを口に含みます。
するとそれはほんのりとすっぱい果実。
少年のペニスは少年自身ですら今まで見たこともないくらい、大きく太く堅くなりました。
おやおや…大きくなった自分自身を前に、少年はどうしていいか分かりません。
右往左往してしまいます。
少女はそれを見てとり、やさしく自分からリードして、
自身の中の小劇場にその小さな願いを導きました。

少女からすれば人間のそれなどクマに比べるまでもなく、
茫漠に肥大化した自分の空白を埋めるには小さ過ぎます。
淋しさを埋める何の足しにもなりません。
少女は諦めに似たような涙が内側からこぼれるのを悲しく知りました。
それと同時になんかおかしくて、必死で笑い転げたいのも我慢しました。
一方の少年はまさに夢心地。
エモイワレヌ快楽が、すべての中枢神経がペニスに集約されて、
あふれんばかりの塩水に、なんどもなんども自らを溺れさせては呼吸し、
また溺れさせては呼吸しました。
そうです。
なんども、なんども、なんども、なんどでも・・・。

その刹那に少女は夢を見ている。
股間にほんのり熱を感じる頃、
気づくと自らを圧倒的な光が照らしているのです。
時間から見て太陽なんかでは絶対にない。
それは少女を焼くのではなく、むしろ突き刺すような誠実な白光。
まなこの裏に不思議に映る影。
なんでだろう、祈り・・・祈り・・・祈り。
あたしには何もわからない。
あなたが、見えない。
それは網膜に意思を持って動き何かを語っている。
でもそれは実体のない何かであり、やがて消えてしまう影です。
わたしは今なにかを失ったのかもしれない。
少女はそんな風に感じました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

部屋が再び静寂と夜を取り戻し、ふと少女が気づくと、
少年はよだれを巻き散らかして、横でポックリと果てていました。
部屋はいろんな匂いが入り交じり、重く、重く、
もはやあの夜にクマが飾った甘い香りは、
その気配さえすでに石化してしまったように見えるのでした。


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19:15:40 | 未選択 | トラックバック() | コメント(0) | page top↑
【クマのねぶくろ】#13(山を下りて町へ)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

やがて朝になりました。
少女は浅い眠りを繰り返し、繰り返し、
その合い間にクマを想いそっと涙を流しました。
おかあさんとケンカして自分が辿った山道。
迷って出会ったオスのクマ。
彼がわたしにくれた花、香り。
食パンに塗ったハチミツ。
口に含んだスープ。
腰を締め上げる毛むくじゃらの大きな手。
吐きそうなくらい硬いペニス。
あたたかな胸、びくともしない腕と肩。
そして最期に見た横顔。

彼は結局のところ最期まで私を愛してくれたんだわ。
白日の夜を経て少女は思いました。
彼はケモノ、ホントは私を食べてしまいたい、
でも愛してるから食べない、だから去った…去るしかなかった。
彼は結局のところ私を自分の中の野生から守リ抜いたのだわ。
そう少女は確信しました。
これでいいの。
これがいい。
きっとあなたは間違ってない。
あたし、強くなる。
そしていつか強くなったあたしと、
ケモノを捨てたあなたは、
この森、この山小屋でまたキスする。
きっとできる。
きっとまた会えるよ。

少女は本当に久しぶりに笑いました。
そして立ち上がり、
朝ゴハンをついばみにくるスズメにお構いなく、
力強く窓を開け放ちます。

まるで月曜日のように。

いつもの自分のように。

一方、少年は午前中ずっと惰眠をむさぼり、ゴロゴロとしていました。
生意気に今や少年は少女を名前で呼んだりしてます。
女を知った少年は妙に得意そうで、
少女におかしなことばかり言っては一人で笑ってます。
どこかのバカなj国会議員みたいで書き手も少しキレそうですが、
ここは物語の進行のためにグッと我慢しておきましょう。

午後になると少年は2回、昼とおやつの時間に少女を求めました。
少女はにんげんとの接点を回復させるために、つどそれに応じます。
少年はますます有頂天になりますが、少女は構いません。
実際のところ彼女にとって少年はにんげんとつながるための、
ただのしゃべるペニスに過ぎません。

2回目のSEXが終わると、少女は少年に「町へ帰ろう」と言いました。
クマのいない森は少女には無駄で不便な牢獄でしかありません。
少年はそんな少女の胸のうちなんて知りません。
安易に便乗する馬鹿な少年は少女に、
「そうだね、町には僕らの新しい生活が待ってるからね」と言いました。
少女はよく分からなかったので、ただ笑っていました。

そして少女は長い時間をかけて化粧をし、
一切のモレがないことを確信した後で、
少年に手伝わせてドアというドアを古い木で打ちつけ、
目の中にそれを焼き付けるように大きく深呼吸してから、
カッカと一人で胸を張って森を抜け、山を降りてゆきました。
その数十メートル後ろを、少年は小走りで文句いいながら下って行くのでした。

・・・・・・・・・・・・・・・10 years later・・・・・・・・・・・・・・・

少年は中途半端なサラリーマンになり、
少女は町で夜の女になります。

でも24歳になり町で偶然に会った二人は、
やがてカタチだけの愛のない結婚をするのでした。

 

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19:16:17 | 未選択 | トラックバック() | コメント(0) | page top↑
【クマのねぶくろ】#14(社会への関与)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

町に戻った少年と少女は、
そのまま中学を卒業するまで肉体関係を続けました。
少年はそれを暗に愛だと信じましたが少女にとっては、
単に自分の股間の隙間を慰める以上の意味はありませんでした。

二人が16になり、それぞれの高校に進学すると少女の両親は離婚しました。
17になると少女は家をとびだし、繁華街の路傍にしゃがみこみ、
知らない男の部屋を転々と暮らすようになります。
気づくとそんな生活の中で少女はいつの間にか夜の女になり、
年に1,000人の顧客を相手にし、20になるまでに子供2人を堕しました。
そこまでしてようやく少女はクマを意識の向こう側へ追いやることが出来たのでした。

一方で少年は高校の始めの1年だけ少女を引きずりましたが、
教育熱心な親のふんだんにかけた金のおかげで遊びながらも大学へ進学し、
可もなく不可もない成績をとりつつ4年間を過ごし、
やがて卒業と同時に多くの人と同じように一流企業へと就職します。

社会に出て約3年。
少年が仕事に慣れたころ夜の繁華街で、
少年は偶然にも懐かしい少女を買うことになります。

青年になった少年のズルさは、
社会知識を織り込みながらその洗練さを研ぎ澄ませます。
もっとも商売をするのにはそれくらいがちょうどいいのかもしれませんが・・・。
臆病さも手伝い用意周到かつ慎重にコトを遂行することが少年は得意でした。
手を触れずにクマを一匹殺してしまうような男です。
やがて少年は堅実に成果を重ね、力あるものに一目おかれるようになりました。
重要な仕事を任され部下にシェアすることは、
逆に各方面からも様々な相談を受けることになりますので、
傍目から見ると限りなく充実した社会生活を営む青年に見えるのでした。
もちろん傍目からは、という条件で描写するとです。
一方で少年のメンタルからすればそれはまるで馬鹿らしい茶番でした。
自分には決定権はない、実行もしない。
それはまるでどちらとも言えない中空に浮いたまま、
ふらふらと右往左往して日常を流しているのと同じです。
現実感覚の欠如・・・空しさ・・・孤独。
多くの例に漏れず少年の健全な情熱は、あっという間に穢れてしまうのでした。
夢は中途半端にしか叶わず、1年が経ち、2年が過ぎ、3度目の冬が過ぎてゆきます。
少年は次第に夜の街に出ては、虚勢を張ってイバリながら金で小さな夢を買い、
ますます冷酷でねちっこくて小さな男に成り下がるのでした。

偶然にも彼が彼女と出会ったのはそんな頃です。
何と言う偶然でしょう・・・二人はほぼ10年ぶりに再会し、
少年は一方的に運命を感じるとか言って少女を押し倒し、
やがて二人はなし崩し的にできちゃった結婚に流れるのでした。

少女は夜の世界を抜け出したかと思うと、たやすく家庭におさまりました。
もともと適応能力に優れた足の軽い女です。
周囲に期待される機能や役割を見て取って実際にそれを行うことは、
彼女には補助なし自転車に乗るくらい日常なことだったのです。
洗濯をし、ご飯をつくり、妻としての作り物みたいな白い笑顔を浮かべる。
どこにでもある幸せを演じるゲーム。
単なるおままごと、です。

少年がルスの間、少女は庭に種をまき、花を咲かせました。

少女は庭に種をまき、少年がルスの間に花が咲きました。

少女は時々、透明なクリアタッパーに小さな黒い虫を満たし、
じっと眺めたあとで火をつけます。

でもそんな彼女の姿は誰にも見られたことはありませんでした。

 

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19:27:47 | 未選択 | トラックバック() | コメント(0) | page top↑
【クマのねぶくろ】#15(スープの唄)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

コトコトとスープを温めます。
優しく心をとけさすように、
コトコトとスープを温めます。

大切なもの丸いもの、
胸の奥に鍵かけて、
ときどき匂いがもれるから、
そんな時にはコトコトコトコトコトコトと、
わたしはスープくゆらせます。

街は小さなわたしを犯しました。
わたしは街に何度も犯されました。
でも胸にだけは何も入れません。
身体だけを、粘液だけを提供し、
むしろ勝手にファックさせました。

にんげんのオスどもが果てます。
わたしは財布からユキチをあるだけ抜いて、
小さな部屋に帰りました。

あたし結婚したかなぁ?
まるで覚えがないね。
にんげんがいるだけ。
そばににんげんがいて、
その中でただ生きてるだけ。

クマは消えた。
あたしはにんげんのメス。
メスはオスを果てさせから、
あたしは小さな部屋に帰ります。

胸の中の小さな部屋。
あったかなバンガロー。
小さな胸のバンガロー。

あたしはスープを温めます。
優しく心をとけさすように、
あたしはスープを温めます。

コトコトコトン、コトコト・・・と。
あたしにはそれしかない。
あたしはそれだけの存在よ。

 

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19:28:16 | 未選択 | トラックバック() | コメント(0) | page top↑
【クマのねぶくろ】#16(回帰点)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

ある晴れた朝。
少女は衝動的にカツカツ歩き、
街をすり抜ける電車に乗りました。
目的とか理由などではなく、
ただ街を抜けること意味があるように思えたのです。

あたし、生きてていい?
どこを、歩けばいい?

でも答えなんて始めから決まっています。
森と湖に囲まれた北部地区の小さく美しい町、ホームタウン。
コウインヤノゴトシ?
いつのまにか少女は27になり、16で家を飛び出してからすでに10年以上が経過していました。
庭のサボテンどうしたかなあ・・・。
おかあさん、もう死んじゃったかなあ。
少女はうつむきます。
それはまるで隣りの席から見れば、
何か思い出して一人で笑うように、
幸せを楽しむように見えます。
街を飛び出した衝動はそのまま・・・。
少女はほぼ1年ぶりに涙を流すのでした。

いくつか電車を乗り換えて街から離れると、
空気や緑の色が変化してゆくのが明らかに分かりました。
電車が進むにつれ少女は本当に久しぶりに自分を取り戻せたような気がしたのでした。
やがてホームタウン。
変わらない駅に降り、坂道を下り、少女は家に帰ります。
でもノックなんてしません。
だまったままキッチンを通り過ぎ、部屋に荷物を放り出したら、
少女はくるりと振り返ると森に向かいました。
自分を縛り、影響し続けるもの。
結局のところこの地表の上で少女が眠れる場所は他にはないのです。

クマのねぶくろ。

古い理不尽は今も重く、重く、少女を過去へ否応なく引きずり戻します。
それにあらがって生きるのは不自然でしょうし、もはや限界にも思えるのです。

だからこそ、わたしはここにいる。
わたしはここにきた。
だから何もとめない。
もう、わたしはわたしを縛る必要はないのよ。

少女は森に向かいます。
あのころと同じ。
軽やかなステップを踏み、草原を抜け、丸太を飛び越え、
くもの巣を払いのけ、進んでいきます。
この先に木の家があるはず。
ところどころ崩れてるかもしれない。
でもそこがわたしの帰る場所。

意味・・・かけがえのない、意味。

 

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19:28:44 | 未選択 | トラックバック() | コメント(0) | page top↑
【クマのねぶくろ】#17(笑み/ 少年の静かな後悔)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

軽快な足取りで森の奥深く、
ぼくらの器用な少女は迷うこともなく、
懐かしい小屋を美しく見つけました。
少女はビーズのような汗をそっと拭い、
肩で息を整えます。

小屋を見上げます。
こんなに小さかったものかしら。
白いペンキは雨や風ですっかりとはがれ、
木々が組み合わさった部分からは枝が無節操に伸びていました。
少女は試しにカカトで壁を蹴ってみます。
いやいやなるほど・・・クマのすむ小屋はさすがに頑丈です。
少女はうれしくなり、唄うのでした。

・・・・・・・・・・・・・・少女の唄・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

まっしろなおうち

深い森にかこまれ

葉が赤くなって落ちると

すべての気配が消える森の奥に

まっしろなおうちがあって‥

窓から悲しそうに

女の子が外を見てる

その灰色のまなざしは

何を見るんだろう

誰を待つんだろう‥

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

山を降りる時に閉めた窓はそのまま。
クマのバンガローは静かにそこで彼女を待っていたのでした。
枯れ木が春を待つように、そっと息を潜めて。
いや、むしろ少女の心はそこにとどまったまま。
自分自身を待っているのかもしれません。

少女は大きなカギをナタで器用に壊しドアを蹴り開けます。
むっとする埃、カビ、その他わけのわからない空気を無視して部屋に入り、
少女は窓を大きく開け放ちます。

ずっとそうして来たように・・・晴れた月曜の朝のように。

軽く埃を払い壊れた古いものを集めて庭とダンロで燃やしていると・・・。
やがて空気は透明な闇に変わってゆきます。
遮られない透明な闇。
あの時と同じ、オレンジ色のわたしがいる。
変わってないわたしは、確かにここにいる。
少女はくたびれた服を脱ぎ、自分をやさしく愛撫します。
ほんのりとしたはちみつ、花のにおいがかすかにします。
揺れる影はわたし・・・踊る指はあなた。
インディアンの夜みたいなマスターベーション。
少女は悦びの瞬間、美しい涙を流し、やがて眠るのでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

少年は街で少女の影を探しています。
イルミネーションの街。
大人になった少年は少女のなにを悟れたというのでしょうか。

そこに幸せの形など、描かれたことはない、というのに。

 

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19:29:13 | 未選択 | トラックバック() | コメント(0) | page top↑
【クマのねぶくろ】#18(フィナーレ/幸福論)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

物語はここで終わる。
フィナーレ。
ここでは幸せは誰にも訪れることはない。
はじめからわかっていた。
だからこれは単純な悲劇である。

もし救いを導くならば、
それはどんなにか大切なものだって、
いつだって簡単に消えてしまう事実を、
静かに認めてみせることだけだろう。

みな誰もが、失われた幸せをかろうじてつなぎ、
脚色しては、また引き伸ばして何となく生きている。
人生は長いマスターベーションだって、
ぼくみたいなタイプは漠然と思ってたりもする。
多分あなただって大差ないはずだ。
それも一つの見解。

でも、それが全てではない。

ぼくにとって、これはあくまでも幸福論である。

繰り返してゆく美しさがあるならば、
失われてゆくことの幸せもあるのかもしれない。
それは自虐の意味ではなくて、
誇りある死や苦痛から何かを誕生させる、
そんな希望のような意味で。

幸福

それは悲劇に逆らうことなく、
また過去を求めるでもない第3の路、
ただ求め続ける苦しみの中にあるのかもしれない。

そんな風にぼくは、最近は考えている。

だから少女が再び手にした「インディアンの夜」を経て、
もし眠りから覚めたとき、失われたクマを求めあてのない未来へ旅立つとしたら・・・
実際に彼女は驚くようなフットワークを持つ、力ある少女である。
ぼくはそれを知っている。

そうすることで、これは純粋に喜劇となる。

だからこれは幸福論なのである。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・おしまい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

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<気まぐれな休日の手紙/Y・K>
2007 / 07 / 04 ( Wed )

新緑、とは言えないか‥まだ。
その辺よくわからないけど、
ともあれ君のこと考えてた。
理由とかじゃなくて気分で。

こっちは雨が降っていて少し寒い。
でもキミの町はきっともっと寒いだろう。
夏だって少し寒いくらいだったから。

こじんまりした緑色の町。
二両だけのワンマンに乗って海沿いを離れ、
森と草原を抜けるとやがて小さな駅に着く。
町の中央には平和か何かを象徴するモニュメントがあって、
役場を中心にして、小さなビルが等間隔で並んでた。
知らない名前のコンビニ、古くて中の見えないメガネ屋、
君の勤めてた歯科の隣りには妙にモダンなバーガーショップ。

土曜の午後にボクはキミを待っている。

車で空港に向かうと地方特有の大型スーパーがあって、
シンボルにならない人気のない観覧車が回ってる。
知ってたか?
アレ見上げてるとさ‥なんか遠くへタイムスリップするみたいな、
妙な気分になる。
キミが手をつないでても、ボクは遠くからそれを見てるような。

とても晴れてて‥空が高くて、腰までの雑草が風に揺れてる。
トイレとか言ってキミが向こうへ行くと、ボクは駐車場で一人で。
キミが買った銀だこを一個つまんで風に浴びせながら、
ずっと観覧車を見上げてた。
自分の中に沸く不思議な孤独にくっついたり、
離れたりして、遊びながら。
すすー‥と重力を離れると感情は消えてく。
ボクの意識は観覧車の付け根のベアリングになる。
ただ青いだけの空を背景にして果てしなく回る、
終わらない‥運動?
なんだろ、うまく言えないけど。
文字どおり終わらない、運動。
大地とベアリングの中空あたりにボクは浮いてる。
視界は鮮やかなんだけど、周りは見えてない。
世界はほとんど無音に近い。

キミが帰って来る。
「なにしてるの?」とボクを大地から呼ぶ。
「‥べつになにも」とボクはモゴモゴと中空から答える。
でも意識をかき集めると、すぐにまた窮屈なボクになる。
「‥寒い」とボクは言う。
「そうかな?」とキミはあまり気にしない。
いつものように。

それから部屋に帰るとボクらはSexする。
オンボロのスキマを遮る重いカーテンを閉め、
その穴ぐらの中でボクらは上になったり下になったり、
逆さになったり、わけのわかんない格好になったりして、
くっついたり離れたりした。
我慢ついでにボクは観覧車のコトを考える‥終わらない、運動。
限りなく繰り返せば、本能は麻痺してくるけど、
ボクはその肉体にとどまっている限りでは孤独ではなかった。
たとえ部分であれつながりさえすれば充分に温かかった。
それが幸せと呼べるかは‥正直わかんないけど。

でも快楽とはちがう、それはなにかだった。

それからキミはカーテンを開き、
オレンジの夕日を部屋に入れると、
お湯を沸かして、コーヒーを2つ入れた。
そして夕飯になにを食べるかってボクに聞くんだ。
「作るよ、気が向けば」ってニヤニヤしながら‥。

‥中略‥

夜が更けると町は霧に包まれる。
起こさないように抜け出して駐車場まで来ると、
ボクは誰も知らない秘密の場所を歩いてる感じがしてた。
そこでは自分が生きてるとか死んでるとかってのは、
あまり大きな問題になる差異ではなくって、
ただ自由になること、それがボクを解放した。
ボクは駐車場でタバコを吸う。
そして魂のカケラみたいな火をつま先で消して、
部屋に戻り、キミの隣りで丸くなって眠った。

やがて朝になる。
太陽が霧の町をうっすらと染める頃、
キミはせっつくようにしてボクを起こす。
着替えて車に乗り、スルーして朝のマックを買い、
食べながら駅でボクを下ろすと、
笑いながらバイバイをした。

「じゃ行ってくる」とボクは言い、
「ガンバってね」とキミは答える。

そんな風にしてボクらは離ればなれになる。
ボクは東京に‥キミはその町に。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

時がたてば記憶は極めて軽薄に、
別の要素と重なったりしてデフォルメされてく。
ともすればそこにボクらが打ち立て、広げようとした感情は、
純粋に単なる幻想のようで‥曖昧に滲んで映るけれど。
ふと思い出すんだ、キミを最近。
同じように中空に吸い込まれてくような孤独、も。
何でだろ‥弱くはないはずなのに‥。

わがままを言うタイミングを計る表情もそう、
好き嫌いを言うボクを不審がる悪意もそう、
無茶をして苦しんで黙って泣く意地もそうだし、
しゃがみこんでボクを見てる無邪気もそう。
そんな部分だけが残るなんて、まるで想像もしなかった。

折れない互いのわがままや、嘘や、迷いが、
ある日この世の最低最悪の武器になって、
柔らかな何かを決定的に切り裂いたとして‥、
今では不思議とそんな痛みすら愛しく思う。
懐かしく、思う。
ふと、コトバを思い出したりする。
こんな風に届きもしない手紙を書くくらい、
今ならば誠実に。

‥遠い昔に見た絵本みたく、目を閉じてめくると、
キミはまだあの小さな駅にいて、ボクに手を振るようで。

せつなく、微笑み。

今が幸せであればいい、と願う。

さよなら。

A to Y ‥気まぐれな2006年/春の休日に

 

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<Rain_#1>
2007 / 07 / 04 ( Wed )

口もつけてないコーヒーに目をやる。
銀のスプーンはほんの少しだけミルクをかき混ぜると、
役を終えたエキストラのように、
舞台袖でぼんやりとエンドロールを待っているように見えた。
壁掛けの時計は15:00を打つ。
そしてあの人はわたしを待ち続けるんだろう。
無邪気で他愛のない誰かの出来事や、わたしを裸にして欲しがらせることを思いながら。

はじめに誘ったのはわたしだった。
正直、誰でもよかった。
理由はわたしにある。
あなたにではない。
うつむいたまま張り詰めた沈黙を経て、
「抱いて欲しい」と言えばそれでよかった。
ボタンを外し、ストッキングを丸めた。
口に含んで舌で転がし、直立したそれに自分を沈める。
させたいようにさせるだけ。
わたしは単に何かで欠落を埋めたかっただけだった。
重たいほうに落ちてしまうくらいなら、
例えばそれが誰かを傷つけたとしても、
自分自身をなにかにつなぎとめておくことが出来ればそれでよかった。

あなたはすぐに愛してるかを聞く。
わたしは「きっと」としか答えない。
たぶん愛してないから。

3月をバースデーにしたのはあなたのため。
あなたは繊細なリングを買った。
痛い人。
少し泣いたのは自分のため。
すべて消えちゃえばいいのにと思う。
あなたの見ているわたしの幻想も傷つけた過去も全部。

時計はとうに15:00を過ぎた。
あと何本かタバコを吸い、あなたは多分わたしに電話をかける。
そしてナンバーもアドレスも使われていないことに気づいて眉をしかめることになる。
悪いイタヅラかもしれないって、どこかで笑ってるはずのわたしをキョロキョロと探し始めるんだろう。
でもそれで終わり。
汚れは汚れで拭き取るもの。
そんな風にしか、わたしはわたしでいれなかった。
あなたは深く傷つき、自分を哀れみ、わたしを呪うだろう。
でも、それがわたしだった。
汚れた昨日のわたしだった。

知らない終着までゆく電車で北へ向かう。
頭が重い。
なにも食べたくない。
夜に独りで揺れてる。
そんな風にして今日は過ぎていった。

知らない町。
小さなホテルで目を覚ます。
時計は夕方に近く、空は灰色だった。
鏡の中の顔は自分に見えなかった。
お湯で顔を洗って、明るい紅をのせてみる。
それでも昨日より少し歳を取ったようにみえた。

服を着て、海岸へ向かうバスに乗った。
とても海が見たかった。
むかし家族と行った砂浜はどこへ消えてしまったんだろう。
17で家を出たきり思い出したことはなかった。
台風が去った次の日の朝。
海は痛いくらいまぶしかった。
笑ってるわたしがいる。
おかあさんもいる。
おとおさんは難しい顔して釣りをしてる。
あたしは石をひろうことに夢中だった。
家族だった。
わたしはきちんと子供でいれた。

戻りたい。
素直に笑ってた頃に。
悲しいのか嬉しいのかよく分からない涙。
どっちでもいいって思う。
目を閉じれば、今も笑みはつくれる。
だいじょうぶよ、ママ。
ちゃんと幸せだから。

灰色の町。
雨が降っている。
窓の外の小さな商店街の向こうに海が見えた。
コインを投げてバスを降りる。
誰かがなにかを言ってるけど聴こえない。
わたしは笑ってるの。
しあわせだから笑ってるの。

坂道を下る。
商店街を曲がり古い住宅地を抜けて、
目の前の海に向けて坂道を下った。
髪をつたう6月の雨は優しかった。
張りついたブラウスも目にかかる髪もそう。
なにをかばう必要があるの?
もう遠くまで来たのに。
やっとここまで来れたのに。

わたしは海に向かう。
細いヒールを捨て、裸だしまま坂道を下る。
素直な笑みはそのまま。
いくつもの廃屋を越えてく…

静かに雨が降り続いていた。
6月の午後の雨だった。

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<Rain_#2>
2007 / 07 / 04 ( Wed )

小石に触れる。
手のひらで軽く量るようにくゆらせ、そっと閉じ、開く。
小石は、やがてかすかな熱を発し、ある臨界点にいたる瞬間にその抵抗を解き、表情を一変させる。
それはもはや固体ですらない。
少年に、石はまるで透明なミドリ色のゼリーを思わせた。

それは呼吸し、身を揺らすようにして躍動する。
そして封じていた物語を再び唄い始める。
小石は少年に唄う。
なぜココにいるのか。
ナニを見たのか。
そして、なぜクチをつぐんだのかを。

それは静かに、かすれるような声で、そっと語りだす。

ある年、少年は大きな地震を恐れた。
その一週間の後、近県の沿岸部を震源とするM5.5の地震は隣町の木造家屋の20%を倒壊させ、
40人を超える老人を圧死させ、焼死させた。
またある年の5月から9月にかけて、
少年はべつべつの場所に3体の遺体があることを姉に教えた。

都内に住んでいた20代前半の娼婦を除き、
残った2体は既に白骨化しており身元はいつまでも不明だった。

母親に怒られるまで、少年にそれはごく自然な日常だった。
石はいろんな秘密を教えてくれる。
ランドセルと空の弁当箱を母に渡すと、
そのまま近所の海岸にかけて行き、
暗くなるまで何時間も小石を集めている毎日だった。

心配になった母親は少年を医者につれていく。
医者は少年の理解者の一人だった。
「お子さんに異常なんてありません。むしろ7歳してはかしこいくらいですよ」と彼は母親に説明した。
「うまく言えないことを人に説明するというのは、それはそれで難しいことですから」と。

とは言え子を生む以前から探していた母(つまり少年のおばあさん)の手紙を少年が手渡してきた時、
彼女は少年に恐怖を覚え、自分の思ったことを簡単に人に話してはいけない、としかった。
彼女はそのことでイライラしたし、育児に参加しなかった夫の忙しさをののしりもした。
父親は黙ってタバコを吸っている。
普通でないことは彼女にとっては許せないことの一つだった。

母親に怒られて以来、少年は小石と話すことをやめた。
基本的に環境の変化には無関心なくらい素直な性格の子だった。
それと同時に少年は話す行為そのものもやめた。
話すべき言葉は初めから何もないように。

無口な少年は海岸へ行く代わりに今度はベランダに座り何時間も空を眺めるようになる。
晴れた日も雨の日どちらともつかない曇った日も、洗濯物の合間にちょこんと座り、
シャツの向こう側に見える空を夕食に呼ばれる時間まで眺めるようになった。
何を見ていたのかは誰もしらない。
何を聞かれても少年は首をかしげ、
井戸の底を上からのぞき込むような目をするだけだった。

中学に上がると少年は少しずつ文章を書くことを楽しむ。
無限に見えるコトバの配列は、その組み方で人の感情を揺さぶるチカラを放つ。
少年にはそれが面白かった。
媒介すべきコトバはすでに自分の中に沈殿している。
それが意図する何かは少年にはうまく分からない。
でもそんな風にして少年は世界に目を向けるようになる。

~Non-Title~

はじまりは大きな夜
だだっぴろい孤独
ボクらはみんなそこから来た
なにも持たず
なにも語らず

存在は光
ココロ開いてボクら世界を描く
たくさんの世界
一つになんてなれない

だから

誰もキミを否定しない
キミも誰も否定しない
一つじゃないから
争う意味はない

小さな丘の上
晴れてるのに雨が降りそそぐ
遠くに見える町を
手のひらで包む

おしまいは約束
長い永い果てにボクら一つになる
おしまいとはじまり
ただそれが繰り返す

鳴り止まぬファンファーレ
愛のスーパーノバ
ボクらはボクらを超えて
次の約束の地めざして…

~ハレルヤ~

ベランダに座ることは習慣としていつまでも残った。
コトバは相変わらず少ない。
でもそれが誰かを不幸にするわけではない。
少年は宛てのない文字をメモに書き連ねていく。
バッグの中にたくさんのコトバ。

宇宙

~ハレルヤ~

たった一つだけの約束を目指して…

 

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