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【クマのねぶくろ】#17(笑み/ 少年の静かな後悔)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

軽快な足取りで森の奥深く、
ぼくらの器用な少女は迷うこともなく、
懐かしい小屋を美しく見つけました。
少女はビーズのような汗をそっと拭い、
肩で息を整えます。

小屋を見上げます。
こんなに小さかったものかしら。
白いペンキは雨や風ですっかりとはがれ、
木々が組み合わさった部分からは枝が無節操に伸びていました。
少女は試しにカカトで壁を蹴ってみます。
いやいやなるほど・・・クマのすむ小屋はさすがに頑丈です。
少女はうれしくなり、唄うのでした。

・・・・・・・・・・・・・・少女の唄・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

まっしろなおうち

深い森にかこまれ

葉が赤くなって落ちると

すべての気配が消える森の奥に

まっしろなおうちがあって‥

窓から悲しそうに

女の子が外を見てる

その灰色のまなざしは

何を見るんだろう

誰を待つんだろう‥

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

山を降りる時に閉めた窓はそのまま。
クマのバンガローは静かにそこで彼女を待っていたのでした。
枯れ木が春を待つように、そっと息を潜めて。
いや、むしろ少女の心はそこにとどまったまま。
自分自身を待っているのかもしれません。

少女は大きなカギをナタで器用に壊しドアを蹴り開けます。
むっとする埃、カビ、その他わけのわからない空気を無視して部屋に入り、
少女は窓を大きく開け放ちます。

ずっとそうして来たように・・・晴れた月曜の朝のように。

軽く埃を払い壊れた古いものを集めて庭とダンロで燃やしていると・・・。
やがて空気は透明な闇に変わってゆきます。
遮られない透明な闇。
あの時と同じ、オレンジ色のわたしがいる。
変わってないわたしは、確かにここにいる。
少女はくたびれた服を脱ぎ、自分をやさしく愛撫します。
ほんのりとしたはちみつ、花のにおいがかすかにします。
揺れる影はわたし・・・踊る指はあなた。
インディアンの夜みたいなマスターベーション。
少女は悦びの瞬間、美しい涙を流し、やがて眠るのでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

少年は街で少女の影を探しています。
イルミネーションの街。
大人になった少年は少女のなにを悟れたというのでしょうか。

そこに幸せの形など、描かれたことはない、というのに。

 

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