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【クマのねぶくろ】#14(社会への関与)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

町に戻った少年と少女は、
そのまま中学を卒業するまで肉体関係を続けました。
少年はそれを暗に愛だと信じましたが少女にとっては、
単に自分の股間の隙間を慰める以上の意味はありませんでした。

二人が16になり、それぞれの高校に進学すると少女の両親は離婚しました。
17になると少女は家をとびだし、繁華街の路傍にしゃがみこみ、
知らない男の部屋を転々と暮らすようになります。
気づくとそんな生活の中で少女はいつの間にか夜の女になり、
年に1,000人の顧客を相手にし、20になるまでに子供2人を堕しました。
そこまでしてようやく少女はクマを意識の向こう側へ追いやることが出来たのでした。

一方で少年は高校の始めの1年だけ少女を引きずりましたが、
教育熱心な親のふんだんにかけた金のおかげで遊びながらも大学へ進学し、
可もなく不可もない成績をとりつつ4年間を過ごし、
やがて卒業と同時に多くの人と同じように一流企業へと就職します。

社会に出て約3年。
少年が仕事に慣れたころ夜の繁華街で、
少年は偶然にも懐かしい少女を買うことになります。

青年になった少年のズルさは、
社会知識を織り込みながらその洗練さを研ぎ澄ませます。
もっとも商売をするのにはそれくらいがちょうどいいのかもしれませんが・・・。
臆病さも手伝い用意周到かつ慎重にコトを遂行することが少年は得意でした。
手を触れずにクマを一匹殺してしまうような男です。
やがて少年は堅実に成果を重ね、力あるものに一目おかれるようになりました。
重要な仕事を任され部下にシェアすることは、
逆に各方面からも様々な相談を受けることになりますので、
傍目から見ると限りなく充実した社会生活を営む青年に見えるのでした。
もちろん傍目からは、という条件で描写するとです。
一方で少年のメンタルからすればそれはまるで馬鹿らしい茶番でした。
自分には決定権はない、実行もしない。
それはまるでどちらとも言えない中空に浮いたまま、
ふらふらと右往左往して日常を流しているのと同じです。
現実感覚の欠如・・・空しさ・・・孤独。
多くの例に漏れず少年の健全な情熱は、あっという間に穢れてしまうのでした。
夢は中途半端にしか叶わず、1年が経ち、2年が過ぎ、3度目の冬が過ぎてゆきます。
少年は次第に夜の街に出ては、虚勢を張ってイバリながら金で小さな夢を買い、
ますます冷酷でねちっこくて小さな男に成り下がるのでした。

偶然にも彼が彼女と出会ったのはそんな頃です。
何と言う偶然でしょう・・・二人はほぼ10年ぶりに再会し、
少年は一方的に運命を感じるとか言って少女を押し倒し、
やがて二人はなし崩し的にできちゃった結婚に流れるのでした。

少女は夜の世界を抜け出したかと思うと、たやすく家庭におさまりました。
もともと適応能力に優れた足の軽い女です。
周囲に期待される機能や役割を見て取って実際にそれを行うことは、
彼女には補助なし自転車に乗るくらい日常なことだったのです。
洗濯をし、ご飯をつくり、妻としての作り物みたいな白い笑顔を浮かべる。
どこにでもある幸せを演じるゲーム。
単なるおままごと、です。

少年がルスの間、少女は庭に種をまき、花を咲かせました。

少女は庭に種をまき、少年がルスの間に花が咲きました。

少女は時々、透明なクリアタッパーに小さな黒い虫を満たし、
じっと眺めたあとで火をつけます。

でもそんな彼女の姿は誰にも見られたことはありませんでした。

 

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