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【クマのねぶくろ】#3(少年は追う)
2007 / 07 / 04 ( Wed )

二人は森の奥へ奥へと入ってゆきます。
少女の30~50メートルくらい後ろをこそこそと追いながら、
もし少女が泣き出したら抱いてあげようと少年は考えていました。
いつか少女を犯す。
実は少年は中学に入ってからずっと、
その機会を虎視眈々とですが狙っていたのでした。

少年は実際とても狡猾でとても計算高い性格でしたので、
頭の中で何度も何度もイメージトレーニングします。
備えれば憂いなし、です。

①一人で森に入った女の子はいづれ淋しくなってシクシクと泣く。
②もし少女が泣き出したら優しく抱いてやる。
③少女は僕を欲しがる。
④僕は少女をものにする。

浅はかなファンシーですね。
その先のみだらさをしながら、
でも少年は意気揚揚として少女を追って森の奥へ奥へと進むのでした。
バレたらいけないという制約は否応なく少年を立たせます。
木々の葉に陣取る鳥たちに普段はしない挨拶を、
今日だけは大声でしたい気分でしたが、少年は股間を押さえながら必死で堪えました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どれくらい歩いたことでしょう。
ありえないくらいの坂道を上ったり下ったり、
木をまたいだり、川をジャンプしながら、少年は少女に引っ張られながらあとを追います。
「なんだよコレ…早く泣けってばこのやろう」
乳酸と同時にストレスも溜まります。
それから約1時間。
ついに少年はクタクタになり、その場にヘタれこんでしまいました。
「あいつ軽すぎる・・・」
少年は知りませんでした。
実はこのあたりは少女にとっては庭のようなものです。
少女は何かから逃げようとするときや一人になりたいとき、
誰かに怒られてムカムカがおさまらないときにはよく、
一人でこの森を抜けて隣町の友人にグチをこぼしに行っていたのでした。
華奢な少女は実はタフだったのです。

そうとはつゆ知らず、うかつにも少女を追って森に入った少年はすっかり疲れ果ててしまい、
かっこ悪いよと思いながらも、仕方ありません。
誰も見てないのをこれ幸いに、
ほどよい原っぱにさしかかったとき、
たまらずにしゃがみこんでしまいました。

ふぅ・・・無理だ。

風はやさしく草原をそよぎ、少年にキスをします。
少女がスタスタ歩いて行くのをぼんやり見つめながら、
意識するまでもなくいつの間にか少年は疲れた体に手足をたたみ、
すやすやと眠ってしまうのでした・・・。

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